SPEED - 最速を追い求めて- [サーキット]
俺はいよいよ「エンジン」に手を入れた。
「足周り」は完璧のはずだった。
ターボチャージャーのタービンを強化する。これで叩き出したのが、「198キロ」という速度だった。
だが、下の写真でお分かりいただけるように、「コーナー」での「安定性」が悪い。
コーナーに進入する速度が少しでもオーバーだと、すぐに「アンダー」が出るのだ。これでは折角、直線で稼いだスピードも無意味になってしまう。
「やはり軽のタイヤは細過ぎて、グリップが効かないか・・・」
次に俺が考えたのは、グリップ強化だった。
☆ リアスポイラー取り付け
☆ 空気取り入れ口付きのカーボンボンネットの採用
☆ 車体下部の「乱気流」防止のためのフロントアンダーカバーの採用
こうして「コーナリング性能」は飛躍的にアップした。
「コーナーギリギリをトレース出来る!」
だが、喜んだのも束の間だった・・・。
「安定性」と「速度」は両立しない。
「リアスポイラー」を取り付けた俺のコペンは、「198キロ」には程遠くなってしまっていた。ヘタしたら、最高ラップが「180キロ」代に終わる日も何日も続いた。
俺は、次第に焦って来た。
「何のための投資だったんだ・・・」
次第に、「無理を承知で」コーナーに突っ込むようになって行った。当然、アンダーが出て、車は「アン・コントロール」となる。他のドライバーからしたら、「いい迷惑」だ。
「後続車」をパスさせて、「コーナー」にトライする。
「直線」を犠牲にした俺の選択肢は、これしかなっかた。
「より早くコーナーを曲がる」
実は、サーキットでは「直線」が意外と少ない。はっきり言って、ストレートは、「メイン&バック」の2本位だ。後は、S字やヘアピンを初めとする、「カーブ」の連続なのだ。
だから、俺絵の選択もおあながち「的外れ」ではないだろう・・・。
大方のサーキットでは、ワンヒート(1度に走れる時間)が、10分~15分だ。俺のホームコース「フォレストウェイ」の場合も15分だった。だが、この15分は決して短いものではない。
限界まで酷使されたエンジンは熱を持つ。当然、熱を逃がすためヒーターは全開だ。「安全性」の観点から、「窓」は「開けない方が望ましい」とされる。-「イザ、横転」という際、ドラーバーは「本能的に手を出し、致命傷」を負ってしまうからだ。フルフェィスのメット、手首まで覆うグローブ、不燃性繊維で出来たウェア・・・。それ等が必須だ。
当然、ドライバーは、「暑さ」との闘いになる。「酷暑の中で、自分のポテンシャルをどこまで引き出せるか?」
周回を重ねるごとに意識が霞んで行くのが分かる。集中力が途切れ、「凡ミス」を犯してしまう。
「立て直さなければ・・・」
その時だった。強烈なアンダーに見まれて、俺はハンドルを握ったまま、360度回る風景を見ていた。
グラベル(コースを逸脱した車の速度を下げるために、小石や砂を敷いた緩衝地帯)に突入し、俺のコペンは2転3転した。「レッドフラグ」(全車走行禁止の合図)が振られ、俺は逆さになったコペンからヨロヨロと這い出した。
― 俺様も若かったモンだ!今じゃ、もうやれないよ!
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